上映作品

再発見!北欧映画の古典 NORTHERN CLASSIC

密書

 
 

■原題:Det hemmelighedsfulde X/英題:Sealed Orders
■監督:ベンヤミン・クリステンセン(Benjamin Christensen)
■出演:Benjamin Christensen/Karen Caspersen/Otto Reinwald
■1914年 デンマーク■85min■字幕:日本語・英語【With English subtitles】
■言語:サイレント(silent film)

    2月10日(日)14:00〜 / 13日(水)19:00〜

密書 トークショー


ストーリー

海軍将校ヴァン・ハウエンは、封緘命令を収めた小包を預けられていた。敵方のスパイであるスピネッリ伯爵は、ハウエンの妻を誘惑し、屋敷に入り込んで封緘命令の機密情報を盗み出す。スパイ容疑で軍法会議にかけられたハウエンは、妻と自分の名誉を守るため真実を証言できずに死刑を宣告されてしまうが、スピネッリの計略に気付いた妻は、夫を救うためにある行動を起こす…。


作品紹介

1910年代、サイレント映画黄金時代を築いたデンマークの映画作家たちの中でも、最も個性的な監督であったとされるベンヤミン・クリステンセンのデビュー作。本作は、1979年に東京国立近代美術館フィルムセンターの特別企画「デンマーク映画の史的展望」以来、国内では上映されておらず、今回の上映はクリステンセン再発見にとどまらず、当時のデンマーク映画の水準の高さを体感できる、またとない機会となるであろう。
クリステンセンは、当初は医学を志していたが、芸術への思いが捨てきれず、王立劇場で学び、オペラ歌手となった。しかし、神経障害で舞台上で声が出なくなるという挫折を味わい、舞台を去ってフランスワインの輸入業者になるが、それでも表現の道を諦められず、紆余曲折の末、映画製作に乗り出した時には、既に35歳であった。
監督、脚本、編集、主演の4役を担った記念すべき第一作は、その独特の照明設計、カメラワークの巧みさ、編集技術の高さにおいて当時の世界最高水準のレベルに達しており、主役を務めたクリステンセンの美丈夫ぶりも素晴らしく、1914年3月のデンマーク公開は大成功を収めた。
しかし、第一次大戦が勃発し、『密書』の国際配給は頓挫することになる。
波乱万丈であることを運命づけられたかのようなクリステンセンの人生は、『密書』に続いて製作されたサスペンス映画の傑作『復讐の夜』、そして世界中で激しい物議を巻き起こした『魔女』(TNLF2012にて上映)と、映画の歴史と共に進んでいくことになる。
今回もTNLF2012の『魔女』に引き続き、サイレント映画ピアニスト・柳下美恵さんの伴奏付きで上映。クリステンセン顕彰企画は、次回のTNLFでの『復讐の夜』上映へと続く予定。 (雨宮)

監督:ベンヤミン・クリステンセン (Benjamin Christensen)

1879年生まれ。1910年代のデンマーク映画黄金期におけるもっとも個性的な監督、脚本家、俳優。
当初オペラ歌手を志すが極度のあがり症だったため映画界に転身した。スリルに富んだ視覚的な演出に優れ、一時期はドイツやハリウッドでも活躍した。帰国後10年間の休止期を経て4作を発表。晩年は映画館の経営に転ずる。

伴奏:柳下美恵 (Mie Yanashita)

サイレント映画ピアニスト。武蔵野音楽大学ピアノ専修卒業。1995年に朝日新聞社主催映画誕生100年記念上映会でデビュー。国内外の映画祭、映画館で伴奏多数。紀伊國屋書店発売の『魔女』の音楽を担当。TNLF2012で伴奏し、好評を得る。