ストーリー

第二次大戦下の1940年、ついにノルウェーを占領したナチスは、国民を懐柔すべくノーベル賞作家クヌート・ハムスンに目を付ける。かねてからナチスの掲げる国家社会主義に共感を示していた彼は格好のプロパガンダ的人物だった。そして戦後、ハムスンはそれを理由に裁判で戦犯とされる。妻のマリーも禁固刑を言い渡され、2人は苦痛と屈辱の日々を分かち合うのだった…。

作品紹介

『飢え』やノーベル賞受賞作『土の恵み』で知られるノルウェーの国民的作家クヌート・ハムスン(1859-1952)は、第二次大戦中、ヒトラーとナチズムを支持する発言をしたことでも知られている。
本作は、1935年から1952年までのハムスンとその妻マリーの結婚生活を中心に、非業の作家の謎めいた人物像に迫る重厚な歴史ドラマ。
北欧が生んだ世界的名優マックス・フォン・シドーが、さすがの風格でハムスンの内面を見事演じ切っており、それと呼応するように、最近では『ホルテンさんのはじめての冒険』にも出演していた、デンマーク映画界を代表する女優ギタ・ナービュがマリーを好演。映画はそんな名優2人のかけあいにより繊細な夫婦物としても味わい深い。
監督のヤン・トロエルは、日本ではハリウッドで撮った大作映画『ハリケーン』(1979)が劇場公開されているのみだが、ベルイマンと対抗するようにマックス・フォン・シドー、そしてリヴ・ウルマン主演で撮った『移民者たち』でその地位を不動のものとして以降、途切れることなく新作を発表し続けている、まさに大家。
本作でその真髄を存分に堪能してほしい。（栗本）