上映作品

ヤン・トロエル監督特集 Jan Troell

マリア・ラーション 永遠の瞬間

 
(ジャパンプレミア)
 

■原題:Maria Larssons eviga ögonblick/英題:Everlasting Moments
■監督:ヤン・トロエル (Jan Troell)
■出演:マリア・ヘイスカネン(Maria Heiskanen)/ミカエル・パーシュブラント(Mikael Persbrandt)/イェスパー・クリステンセン(Jesper Christensen)
■2008年 スウェーデン・デンマーク・ノルウェー・フィンランド・ドイツ■131min
■言語:スウェーデン語・フィンランド語(Swedish, Finnish)
■字幕:日本語・英語【With English subtitles】

    2013年スウェーデンアカデミー(グルドバッゲ)賞助演女優賞

        2/10(月)15:50〜  2/11(火)18:30〜  2/13(木)10:30〜


ストーリー

20世紀初頭、スウェーデン南部の港湾都市マルメ。フィンランド移民のマリアは、くじでコンテッサのカメラを当てる。
結婚後、港湾労働者の夫シグリッドは飲んだくれてたびたび暴力をふるう。酒を断とうと努力はするがうまくいかない。挙げ句、労働運動に身を投じたシグリッドはストライキに参加し、稼ぎを失う。
7人の子を抱え、困窮生活も極まったある日、マリアはまだ使ったことのないカメラを売ろうと決意し、写真店へと向かう。だがその店のデンマークのオーデンセ出身の主人、セバスティアンに説得された彼女は、カメラを手放すのをやめる。親切なセバスティアンから撮影と現像のための材料一式を譲り受け、技術の手ほどきもうけたマリア。夫には内緒で子どもたちの写真を撮る。
一方でシグリッドは飲み屋で知りあった女のもとへ通うようになり、ついには爆破事件の容疑者として警察へ引っ張られるのだった。夫を信じられなくなった彼女は、写真に惹かれ、ますますのめり込むようになる。
一家は鉱山町リムハムンへ転居し、ほどなく第一次世界大戦が勃発。シグリッドは兵役に。その後も時代は激しく移りゆく。夫婦の絆は切れかかるが、マリアは写真を続けるのだった…。長女マヤの視点で描いた、激動の時代を生きた実在の女性写真家の一代記。


作品紹介

この映画製作のきっかけは、監督の夫人で本作の原作・脚本も手がける作家のアグネータ・ウルフセーテル-トロエルが、父親の従姉妹にあたるマヤ・ラーションに対して1986年から行った調査とインタビューだという。作中、語り手として登場するマヤは、主人公マリア・ラーションの娘にあたる。アグネータの調査の間にはマリアが撮影した実際の写真も発見され、本作の着想へとつながった。ちなみに共同脚本を手がけたアグネータも、スウェーデンアカデミー(グルドバッゲ)賞最優秀脚本賞にノミネートされている。
物語の舞台はヤン・トロエル監督の故郷であるマルメと、その近郊にある彼の生地で石灰石の採掘で繁栄した街、リムハムン。スウェーデンのマルメという街は、エーレスンド海峡をはさんで隣国デンマークの首都コペンハーゲンの対岸に位置する、古くから栄えた国際港湾都市である。その豊かで活気に満ちた港町の底辺を支える貧しい労働者階級の人たちを、ときに国際色を交えつつ労働運動や第一次世界大戦など当時の社会情勢も折り込みながら、トロエルらしい観点から生き生きと描きだした。
結果として本作は、夫と写真店主の間で揺れるヒロインのラブストーリーというだけでなく、庶民の近代史を描いた歴史ドラマとしても十分な見応えをもつにいたった。そのことの反映だろうが、本作はスウェーデンアカデミー(グルドバッゲ)賞で最優秀作品賞ほか5冠を獲得したのをはじめ、ゴールデングローブ賞最優秀外国語映画賞にノミネートされるなど、高く評価されたのである。
ヒロインのマリア役はフィンランド出身のマリア・ヘイスカネンが演じている。日本ではアキ・カウリスマキ監督の『街のあかり』(2007)のソーセージ屋の女主人アイラ役の好演で知られる彼女だが、ヤン・トロエル作品には『指揮官』(1991)、“As White as in Snow”(2001)に続き、3作目の出演となった。(塩田)