上映作品

監督特集

オスロ、8月31日

 
 

■原題:Oslo, 31. august■英題:Oslo, August 31st
■監督:ヨアキム・トリアー(Joachim Trier)
■出演:Anders Danielsen Lie/ Hans Olav Brenner/Johanne Kjellevik Ledang/Ingrid Olava
■2011年 ノルウェー■96min■言語:ノルウェー語(Norwegian)■字幕:日本語
■ノルウェーアカデミー(アマンダ)賞最優秀監督賞、最優秀編集賞

        [ユーロスペース]  2/7(土)21:10〜  2/10(火)14:00〜  2/12(木)21:10〜









ストーリー

麻薬中毒患者のための治療施設でリハビリを受けているアンデシュは、出所を間近に控えたある朝、大きな石を抱えて湖に入り死のうとするが失敗。その後、外出許可を得た彼は、就職の面接のため故郷オスロへ戻り、かつての友人の家を訪ねる。別れ際に自殺をほのめかすアンデシュだったが、友人はとりあおうとしなかった…。


作品紹介

冒頭、ひと気がなくうら寂しいオスロの朝の風景が映し出され、そこから、街に生きる人々の様々な人生が数珠つなぎに語られる。多くの人は人生をそれなりに謳歌しているようだが、主人公アンデシュは、今日も深い絶望の中にいた…。
成功を収めた本作は、とくに今を生きる若い世代から絶大な支持を受けた。その理由は、作品そのものの素晴らしさもさることながら、映画の中に、単に幸福度が高いというイメージからは計ることができない現代オスロのリアルな空気と、若者たちが感覚的に感じている焦燥や、生に対する根源的不安が生々しく息づいているからではないだろうか。アンデシュは30代という設定で決して若いとは言えないが、大人になり切れず麻薬に溺れてしまった彼の孤立感はそれをうまく代弁しているのかもしれない。
『リプライズ』を経ていっそう研ぎ澄まされたヨアキム・トリアーの視線は、決してアンデシュを追い詰めることなく、一定の距離を保ちながらその空虚な心の揺れ動くままを静かに見つめ続ける…。
『リプライズ』に続いて主演を果たすAnders Danielsen Lieの繊細な表情が忘れがたい。
本作は、一昨年他界したアメリカで最も有名な映画評論家、故ロジャー・エバートが2012年のベスト映画第9位に挙げている。
そして、ヨアキム・トリアーの次回作はジェシー・アイゼンバーグ主演のアメリカ映画。2本の傑作で世界に認められた気鋭の作家がアメリカに創作の舞台を移し、どういった世界観を見せてくれるのか、今から楽しみだ。(藤本)