上映作品

北欧パノラマ

ジャパンプレミア作品、劇場未公開作品の中からジャンルを問わず選りすぐった北欧映画傑作選!

ビートルズ

■原題:Beatles■英題:Beatles
■監督:ペーテル・フリント(Peter Flinth)
■出演:Louis Williams,Håvard Jackwitz,Ole Nicolai Myrvold Jørgensen,Halvor Tangen Schultz,Susanne Boucher
■2014年 ノルウェー■107min■言語:ノルウェー語(Norwegian) ■字幕:日本語・英語【With English subtitles】

2015年ノルウェーアカデミー(アマンダ) 賞最優秀美術賞
ジャパンプレミア
(ジャパンプレミア)
2/6(土)21:10〜 2/10(水)19:00〜 2/12(金)11:30〜

67年、オスロ。ザ・ビートルズに憧れる高校生4人組は、いつでも一緒だった。両親が不仲のセブ、お店の手伝いに追われるグンナー、厳格な父親に頭が上がらないオーラ、ポール・マッカートニーを気どり、髪型まで真似ている主人公のキム。それぞれが、自分たちをザ・ビートルズの4人に重ね合わせていた。ライブ出演が大きな夢だったが、せいぜい倉庫でザ・ビートルズの曲を演奏したり、仲間たちの隠れ家に集まり「サージェント・ペパーズ」に針を落とし、みんなで聴いたりするのが出来ることのすべてだった。
映画館の帰り道、突然見ず知らずの女の子にキスされたキムは、どこの誰かわからないまま、憧れを募らせ、架空のラブレターを書くことに熱中する。そんな折り、ヘビに襲われかけた転校生の美少女を助けたことをきっかけに、また別の恋が芽生えるのだった…。

『孤島の王』(2010)の原作者としても知られる、ノルウェーの国民的作家ラーシュ・ソービエ・クリステンセンのベストセラー小説「Beatles」の映画化作品。ザ・ビートルズのアルバム「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」が発売された67年、作者は14歳。作品の主人公たちが同年代であること、また彼自身主人公キムと同じくデンマーク系であることから自伝的な要素を持つ作品と思われる。「サージェント・ペパーズ」は、サイケ、ドラッグ、ベトナム戦争、ラブ&ピースへと移り変わりゆく時代を象徴する最先端の作品であったが、映画の中の主人公たちにとって、それらはまだ早すぎた部分もあった。彼らの憧れるザ・ビートルズは、あくまでもアイドル時代の姿として描かれている。「サージェント・ペパーズ」を聴いた時の彼らの戸惑い、そこには、その時代を過ごした原作者の実感が表れているようだ。
一方、ペーテル・フリント監督は、64年生まれ。物心ついた時にはすでにザ・ビートルズは解散していた世代。それどころか、14〜15歳の頃といえば、ジョン・レノンは5年あまりのハウス・ハズバンド生活中であり、ポール・マッカートニーのウイングスは絶頂を過ぎていた。再結成のガセ情報が流れては消えていったのもこの時代であり、だからこそ、ザ・ビートルズはこの世代にとって、より強い憧れであった。
本作は、少年たちの友情と音楽と冒険の日々が、ビートルズの楽曲とともに綴られていくのだが、それだけでなく、彼らの曲にオマージュを捧げた素敵な楽曲も物語を彩っている。スコアと音楽監督を手がけたのは、2015年、2年限定で再結成されたa-haのメンバー、マグネ・フルホルメンだ。a-haといえば、80年代から90年代にかけて世界的に活躍したノルウェー出身のバンドであり、ペーテル・フリント監督は、むしろこちらを身近に感じた世代であろう。スコアのレコーディングはノルウェーのバンドHvitmalt Gjerdeとともにアビー・ロード・スタジオで行われたという。a-haと、ザ・ビートルズの数々の名曲を生みだしたアビー・ロード・スタジオとの組み合わせ、おそらくこれは監督にとって、ひとつの夢だったはずである。そういう意味で本作は二重のノスタルジー構造になっており、さらにはそれが、現代のノルウェーのバンドHvitmalt Gjerdeによって、未来へと繋がっていく形になっている。(藤澤)