ジャパンプレミア作品、劇場未公開作品の中からジャンルを問わず選りすぐった北欧映画傑作選!
Maiko ふたたびの白鳥
■原題:Maiko: Dancing Child■英題:Maiko: Dancing Child
■監督:オセ・スベンハイム・ドリブネス(Åse Svenheim Drivenes)
■出演:西野麻衣子、西野衣津栄
■2015年 ノルウェー■70min■言語:英語、ノルウェー語、日本語(English, Norwegian, Japanese)
■字幕:日本語
■提供:ハピネット、ミモザフィルムズ
英国ロイヤルバレエスクールに留学した西野麻衣子は、19歳でノルウェー王国立バレエ団に入団、25歳でバレエ団では初となる東洋人のプリンシパルに抜擢される。30代に入ってもなお、トップであり続け、向上心とハングリー精神の重要性について力強く語り、まだまだやれる。と確信する一方で、子供を持ちたいという思いもあった。そして、自身がプリンシパルを務める次シーズンの公演のスケジュールが告げられた後、妊娠が判明する。
ノルウェー王国立バレエ団プリンシパルとなった大阪出身の西野麻衣子。彼女が妊娠、出産を経て再びプリンシパルとして「白鳥の湖」の舞台を目指す姿を追う。監督は、本作が初の長編ドキュメンタリー作品となるオセ・スベンハイム・ドリブネス。
優美なバレエのステージに加え、バレエ団の仲間やコーチとのやりとり、レッスンやリハーサルの様子など、その舞台裏にも密着。「白鳥の湖」のハイライトでもある32回転ピルエットに挑む姿も映し出される。また、大阪に住む両親との電話のやりとりや、帰国時には大阪弁でリラックスして話している様子も映し出され、離れていてもサポートし続けている両親の存在も印象的だ。
垣間見えるノルウェーの生活や社会も興味深い。日本人として驚くのは、プリンシパルとしてのスケジュールが既に決まっている麻衣子が妊娠し、それをバレエ団の誰もが受け入れる部分だろう。受け入れ、本人に意向を聞き、それを尊重しながらサポートしていく。出産も、子育ても、キャリアも諦めたくない麻衣子を、夫は育児休暇を取ってサポートする。働く女性たちの多くがキャリアと出産、子育ての狭間で悩み、一方を諦めてしまうケースは少なくない日本ではなかなか想像つかないことも、ノルウェーでは当たり前のように行われていく。
もちろん、ノルウェーでもやはり女性はキャリアと出産を天秤にかけて悩むことはあるようで、麻衣子と同世代の女性でもあるドリブネス監督とは撮影の合間に出産についての悩みを話し合ったりもしたそうだ。とはいえ、ノルウェーは1993年から父親による育児休暇制度が導入され、当初は国内でも戸惑いはあったようだが、今では父親の育休は義務としてではなく、とりたいものとポジティブに捉えられているという。
等身大の30代の女性として時に悩みながらも、華やかなバレエの世界でトップを走り続ける麻衣子の真っ直ぐな瞳には、ポジティブに生きるヒントがたくさん詰まっている。(細川)