上映作品

北欧パノラマ

ジャパンプレミア作品、劇場未公開作品の中からジャンルを問わず選りすぐった北欧映画傑作選!

ソング・フォー・イェテボリ

■原題:Känn ingen sorg■英題:Shed No Tears
■監督:モンス・モーリンド、ビョルン・ステイン(Måns Mårlind, Björn Stein)
■出演:アダム・ラングレン(Adam Lundgren),Disa Östrand,Josefin Neldén,Jonathan Andersson,トーマス・フォン・ブレムセン(Tomas von Brömssen)
■2013年 スウェーデン■119min■言語:スウェーデン語(Swedish) ■字幕:日本語・英語【With English subtitles】

2014年スウェーデンアカデミー(グルドバッゲ)賞最優秀編集賞、音響デザイン賞
ジャパンプレミア
(ジャパンプレミア)
2/6(土)14:00〜 2/8(月)19:00〜 2/9(火)11:30〜
トークショー情報
2/6(土)14:00〜 上映終了後

ゲスト:カジヒデキ
1996年に「MUSCAT E.P.」でソロデビューをした日本を代表するネオ・アコースティック・シンガーソングライター。スウェーデン、イギリス、フランスなど世界各国でレコーディングを行い現地のミュージシャンとも深い親交を持つ。数多くのCMソング制作、プロデュース、楽曲提供の活動など精力的に活動中。2008年映画「デトロイト・メタル・シティ」の主題歌「甘い恋人」はスマッシュヒットを記録。2012年にレーベル「BLUE BOYS CLUB」を立ち上げ13枚目のニューアルバム「BLUE HEART」をリリース。最新アルバムは豪華ゲスト陣が多数参加した「ICE CREAM MAN」。今年、ソロデビュー20周年を迎え、リリースやイベントを計画中。 www.hidekikaji.net

ベッドに寝ていても、メロディが天から降ってくるように思い浮かぶポールにとっての夢は、プロのミュージシャンになること。しかし彼は、人前で演奏しようとするとパニックを起こす、という致命的な弱点を抱えている。子供時代、教会で歌おうとしているまさにその時、緊張から突飛な行動を取ってしまったことがトラウマになっているのである。いつも一緒に行動している幼馴染みのジョニーとレナ、そしてポールの優しい祖父は、そんな彼の悩みを理解し、彼を支えていた。また、レナはいつしかポールに恋心を抱くが、その気持ちはなかなか彼に伝わらない。それどころかポールは、ジョニーのセクシーな恋人エヴァのことを好きになっていた。そんなことを知らないジョニーは、何とかポールが人前で歌えるようにと、ダンス・パーティーを企画するのだったが…。

イェテボリ出身の人気ポップ・アーティスト、ホーカン・ヘルストレムの音楽と詩を元に作られた、音楽ドラマ。映画の原題は、彼の最初のアルバムのタイトルでもあり、ブレイクするきっかけとなったヒット曲“Kann ingen sorg for mig Goteborg”から取られており、劇中には、彼の曲が新旧合わせて10数曲散りばめられている。ホーカン・ヘルストレムは、あくまでもスウェーデン語の歌詞にこだわり、ノルディック圏をターゲットに活動しているインディーズ系のミュージシャンである。そのため日本での知名度は低いが、スウェーデン国内での人気は高く、本作は2013年のスウェーデン映画興行成績の第5位にランキングされるヒットとなった。また、エンドクレジットでは、彼自身が出演し、主演のポール役、アダム・ラングレン(『ビッチハグ』)と共に、“Kann ingen sorg for mig Goteborg”を歌っているのも、見逃せない。
この物語は、イェテボリの街を象徴する風景の中で展開していく。いわば街がもうひとつの主役となっている。冒頭ポールたちが疾走するのは、「フェスケショルカ(魚の教会)」と呼ばれる魚市場の辺りであり、ここが漁師町であることを印象づける。街中では、北欧一の交通網を誇るトラム(路面電車)がいつも走っており、これこそイェテボリといった風景を作りだしている。ポールとエヴァがデュエットするロマンチックな場所は、この都市のシンボルである海神ポセイドン像の噴水前だ。ポールが、リオの風景と重ね合わせる、イェータ川の河口付近に架かる大きな吊り橋は、彼の夢を象徴する存在となっている。まさに風景が人を作り、物語を作っているのだ。本作は、何よりイェテボリへの愛に溢れた作品である。(藤澤)