上映作品

ベルイマンへの旅

世界中の有名監督が熱く語る記録映像と、初期の傑作で伝説的監督を振り返る。ドキュメンタリーには『不良少女モニカ』主演女優の証言も収録。

不良少女モニカ

■原題:Sommaren med Monika■英題:Summer with Monika
■監督:イングマール・ベルイマン(Ingmar Bergman)
■出演:ハリエット・アンデション(Harriet Andersson),ラーシュ・エクボルイ(Lars Ekborg),オーケ・グリュンベルイ(Åke Fridell),ベンクト・エクルンド(Bengt Eklund),Dagmar Ebbesen
■1953年 スウェーデン■96min■言語:スウェーデン語(Swedish)
■字幕:日本語

2/7(日)21:10〜 2/9(火)16:30〜

イングマール・ベルイマン(Ingmar Bergman)
スウェーデンが世界に誇る巨匠。1918年、ウプサラの名家に牧師の子として生まれる。幼い頃から芝居や映画に夢中になり、46年『危機』で映画監督デビュー。『第七の封印』(57)『野いちご』(57)『秋のソナタ』(77)など数多くの名作を映画史に残す。私生活でも5回の結婚や脱税容疑騒動など話題に事欠かなかった。07年没。

ストックホルム南部の下町、陶磁器店で働くハリーは孤独な毎日を過ごしていたが、ある日カフェで親しげに煙草の火をねだってきた17歳のモニカと知りあう。ハリーは野性的な魅力に溢れたモニカに惹かれ、モニカも穏やかな性格のハリーに興味を抱き、ふたりは急速に距離を縮めていく。ある夜、酔った父親に殴られ家を飛び出したモニカがハリーのもとにやってくる。初めは当惑するハリーだったが、父親のモーターボートに彼女を一晩匿い、結ばれたことで人生が一変する。翌日、寝坊して仕事をクビになったハリーは、ボートに食料を積み込んでモニカと晴れやかに船出していく。ふたりは恋と解放感に酔いしれたように海辺や島々を巡る日々を過ごすが、いつしか夏の終わりが近づき、モニカの妊娠とともに旅は終わりを告げる…。

ベルイマンの作品は世界中の映画作家たちに大きな影響を与えてきたが、特に『不良少女モニカ』の、自然の中での生き生きとした撮影と切れ味よい演出は、ヌ−ヴェル・ヴァーグの若い監督たちに衝撃をもたらしたことで知られている。ゴダールは「これは誰よりもオリジナリティがある映画作家の、もっともオリジナリティのある作品だ。ケチをつける箇所がまったくない」と賛辞を送り、多くの監督が熱を込めて自作に引用してきた。夏の海辺の輝き、町の生活の現実、その回想の眩しさまでが撮影から60年以上が経ってもまったく古びることなく迫ってくる青春映画の傑作である。
登場の瞬間から強烈なエロティシズムと生命力を感じさせるモニカを演じたのは、映画撮影当時ベルイマンの恋人であったハリエット・アンデション。生涯で5回結婚したベルイマンは、ハリエットとは恋人のまま別れたが、彼女は『不良少女モニカ』から遺作となった『ファニーとアレクサンデル』まで、ベルイマンの映画に最も長く出演し続けた俳優の一人となった。
恋に酔いしれた夏が終わり、街のカフェで見知らぬ男と差し向かい、煙草に火をつける場面、突然カメラを見つめるハリエット・アンデションの眼差しは今も観る者の魂を射抜いてくる。(雨宮)