ジャパンプレミア作品、劇場未公開作品の中からジャンルを問わず選りすぐった北欧映画傑作選!
ヴィクトリア
■原題:Victoria■英題:Victoria
■監督:トールン・リアン(Torun Lian)
■出演:ヤーコブ・オフテブロ(Jakob Oftebro),Iben M. Akerlie,ビル・スカルスガルド(Bill Skarsgård),フリチョフ・ソーハイム(Fridtjov Såheim),ペトロネッラ・バーケル(Petronella Barker)
■2013年 ノルウェー■105min■言語:ノルウェー語(Norwegian)
■字幕:日本語・英語【With English subtitles】
粉屋の息子のヨハンネスは、領主とその友人の子どもたちからは仲間はずれにされていたが、領主の娘のヴィクトリアは、時々仲間からこっそり抜け出しヨハンネスとふたりだけの時間を過ごしていた。
やがて成長し、ヨハンネスは学校に通うために街へと出ていた。数年振りに帰郷したヨハンネスは、美しくなったヴィクトリアを見かけるがそっけなくされてしまう。しかし、森の中でふたりきになると、ヴィクトリアはヨハンネスに思わせぶりな態度を取るのだった。幼い頃からヴィクトリアを想い続け、詩を紡ぐ時にも彼女のことを考えていたヨハンネスの恋心はさらに募ってゆく。再び街へと戻ったヨハンネスは詩が新聞に掲載され、詩人としても認めれるようになるが、その頃、家計が苦しくなった領主は、娘のヴィクトリアを侍従長の息子のオットーと結婚させようとしていた…。
舞台は19世紀末のノルウェー。領主の娘と粉屋の息子の恋は、「身分違い」の恋ではあるが、ふたりの恋の障害は身分の差だけではなく、その性格が災いしている風にも思える。素直になれないヴィクトリアと、それを知りながらあと一歩自ら踏み込もうとしないヨハンネス。お互いの自尊心が邪魔をして、森で、街で、屋敷で…ふたりの距離は幾度となく近付くのに、次の瞬間にはすれ違ってしまう。原作では美しい文章で綴られる悲恋を、若手俳優たちがフレッシュかつ緻密な演技でそのセリフの裏に隠された本心までを表現していく。また、牧歌的な森の風景や街の描写も見事に映像化され、当時の生活様式も垣間見える。
原作は、「土の恵み」でノーベル文学賞を受賞した、ノルウェーの文豪クヌート・ハムスンの唯一の純愛小説。TNLF2015では、「土の恵み」の同名映像化作品をノルウェーのジャズバンドの生演奏付きで上映。また、TNLF2014ではマックス・フォン・シドーがハムスンを演じた『ハムスン』を上映している。ハムスンの作品は各国で翻訳されているが、中でも「ヴィクトリア」はとりわけ人気が高く、日本国内でもこれまでに4度翻訳され、最新版は2015年の夏に出版されている。
監督は『マリアの輝く星』(98)でノルウェーアカデミー(アマンダ)賞を受賞し、児童映画に定評があるトールン・リアンが務める。主演のヨハンネスに『コン・ティキ』のヤーコブ・オフテブロ、ヴィクトリア役には本作が本格的な映画出演となるIben M. Akerlie、恋敵のオットー役には『シンプル・シモン』のビル・スカルスガルド。ヴィクトリアの父親である領主を演じたフリチョフ・ソーハイムはノルウェーアカデミー(アマンダ)賞で助演男優賞を受賞している。(細川)